top of page
 黒の背景

私たちは、日本ならではの経済構造や文化背景をふまえ、
持続可能で自律的な文化エコシステムの創出を目指しています。

 

文化芸術の創造・発信・享受・支援が有機的につながることで、

アーティスト、観客、企業、行政、教育機関、メディアなど

多様な主体が相互に作用し、 循環していく仕組み

——それが私たちの考える「文化エコシステム」です。

 

アーティスト自身も、支援を待つ存在としてではなく、

自らの創造力と意思によって文化を牽引し、

地域社会や経済にも貢献する推進力として、

このエコシステムの中核に位置づけられます。

芸術の価値と責任を再考する。

現代社会における芸術の価値と責任とは何か。

 

この問いは、私がパンデミックの影響で日本に帰国して以来、繰り返し問い直し、日々向き合っている命題です。

日本では「芸術文化は支援されるべきもの」という考え方が根付いていますが、時にその支援が目的化し、

芸術本来が社会に果たすべき役目や、もたらすべき価値が見失われてしまう場面にも出会います。

芸術が社会に対してどのような責任を果たしうるのか——この点が、十分に語られていないと感じています。

 

芸術には多様な価値と責任があります。

想像力を育てる教育的な側面、人の心を震わせる感動の力、時間を超えて受け継がれる文化的資産としての側面

——いずれも社会にとってかけがえのないものです。

 

ひいては、芸術が生み出す「対話」と「共感」は、人と人をつなぐだけでなく、

社会全体の想像力や柔軟性を育む土壌ともなります。

 

この力は、教育・福祉・外交・経済といった社会システムを下支えする“不可視の資本”であり、

芸術の持つ構造的な価値を裏付けています。

ベルエポック期のサロンや戦国時代の茶室が示すように、

芸術は今も昔も、異なる立場の人々を結びつける最も普遍的な言語です。

 

国が揺らぐとき、文化芸術は真っ先に規制の対象となることがあります。

歴史を振り返ると、体制が不安定になる時期には、表現の自由が制限され、芸術が抑圧される例が数多く見られます。

これは、芸術が社会に問いを投げかけ、共感を通して変革の原動力となり、対話と相互理解を生み出す力を秘めていること、

そしてそれが、社会の根幹に作用する“不可視の資本”としての影響力を持っていることを示しています。

だからこそ、対立や分断をつくることで世界を支配しようとする権力は、芸術を恐れ、抑え込もうとするのです。

 

たとえこれから先、世界が分断と対立をさらに加速させようとも、

芸術には、分断ではなく中庸を、対立ではなく止揚を導く責任がある。

私たちは、その責任を果たすための持続可能で自律的な文化エコシステムの創出を目指します。



代表理事 下地優子

bottom of page